一般社団法人 日本肝胆膵外科学会

高度技能専門医

高度技能専門医申請における注意事項(ビデオ編)

更新日時:2023年5月9日

書類編
参考ビデオクリップ

  1. 審査用ビデオの提出について
    1)審査用ビデオは、修練期間内に撮影されたものに限ります。できるだけ申請1年以内のものを提出してください。ビデオ提出のための承諾書については、必ず術前に署名・捺印をいただいてください。

    2)ビデオ審査用に提出する症例については、全ての工程を術者として行ってください。ただし、手術中に術者を交代する必要が生じた場合には躊躇せず指導医に術者を変わってもらい、その旨を明記してください。

    3)審査用ビデオが複数ファイルとなる場合には、主な手技の時間をタイムテーブ ルで示す際にファイル番号とそのファイル内での初めからの時間(再生ソフトでの表示時間)を記載してください。

    4)提出するビデオの記録速度は「倍速モード」ではなく、「通常」で記録してください。

    5)審査用ビデオは、MPEG-4(mp4)形式にてビデオファイルを作成してください。

    6)該当症例の麻酔経過表(写)および手術記録(写)(術中スケッチと手術標本スケッチ、病理報告を含む)、も提出していただきます。また、ビデオ審査用に提出された手術記録(写)の記載内容も審査の対象となります。

     
  2. 審査基準について
    ビデオ撮影が不良であったり手元が隠れていたりするなど、手術手技が審査できないものは、審査対象とならず、不合格となります。また、ビデオが遠景すぎて、手技の詳細が見えない場合も不合格となる場合があります。そのため、ビデオ撮影専任のスタッフを確保して撮影することを推奨します。特に肝切除における肝静脈根部の操作や、主要脈管切離の場面が見えない場合は不合格となることがあります。手術操作が行われていない時間帯が存在する場合は理由を説明してください。
     
  3. 審査においては、以下項目を含め総合的に判断します。
    注意点の詳細は審査用ビデオページに記載してありますので併せて確認してください。以下、過去に不合格理由となった具体的事例(理由)を含めて詳細な注意点を述べます。

    −共通−

    1)術者の主体的な手術操作になっているか?:前立ちとどちらが術者かわからない、前立ちが重要な部位を鑷子で把持し、剥離操作を誘導しているような場合には不合格になった事例があります。

    2)適切な手術術式が選択されているか?:癌が進行しすぎている症例(例えば肝転移を有する膵癌など)、既往手術の癒着が高度な症例を選択して不合格になった事例があります。

    3)腹膜播種など手術のcontraindicationがないことを確認するための開腹所見の確認や腹腔内の検索を行っていることがわかる動画の提示や手術記載は必須条件とします。

    4)論理的に不必要と判断されるような操作を行っていないか?

    5)危険あるいは粗暴と思われるなど安全性に問題がないか?:粗暴な操作で出血をきたした事例、非常にウエットな中を電気メスで安易に剥離し通電していた事例、剥離が不十分な部位にエネルギーデバイスを乱用していると判定された事例で不合格になったことがあります。

    6)出血量が過剰に多くはないか?

    7)トラブル発生の際に術者が主体性を持って対処できているか?:場当たり的な止血操作、止血に手間取る、針糸をかける範囲が大きいため、血管の狭小化の恐れがあるような場合に不合格になることがあります。

    8)基本的な手術手技を円滑に行えているか?:術者の意図不明な操作や躊躇、小刻み過ぎる電気メスの操作などの理由で不合格になることがあります。手術時間の上限は肝移植症例を除き10時間を目安とし、極端に長すぎる場合は不合格となることがあります。

    9)手術記事が詳細に書かれているか?:術中スケッチと手術標本スケッチは必須です。ただし、絵自体の巧拙は問いません。写真代用は不可とします。特に再建に関してのスケッチは必須です。再建に用いた糸のサイズなどもできるだけ詳細に記載してください。

    10)リンパ節郭清:郭清度が不充分な場合に不合格になることがあります。

    11)血行再建:狭窄の恐れがあると判定されて不合格になることがあります。

    12) 肝門部胆管癌手術や膵頭十二指腸切除では胆管切離場面は重要な手技ですので、手技の詳細がVTRで確認できない場合に不合格になることがあります。

    13)一度不合格の判定となったビデオは再審査の対象となりません。

    14)ビデオ審査用症例として提出した症例が書類審査において高難度肝胆膵外科手術症例として認められなかった場合は、審査の対象とはなりません。




    −肝切除−

    1)切除量や切除術式における術中の判断:不適切な場合不合格となることがあります。

    2)術中超音波:適切に活用されていない場合不合格となることがあります。

    3)肝切除においてその手技から伺える臨床外科解剖の知識があるか?:手術記録記載の誤りから、解剖学的知識の不足と判定されることがあります。

    4)系統切除:肝区域・亜区域の染色法や阻血法による確認、肝離断面に指標となる肝静脈などの露出がなされていない場合、不合格となる場合があります。

    5)短肝静脈の処理:刺通結紮や二重結紮の適宜応用などの安全な処理がなされていない場合、不合格となることがあります。

    6)肝静脈の処理:下大静脈靱帯の認識と安全な切離ができていない場合不合格となることがあります。

    7)適切なグリソン鞘処理がなされているか?:右グリソン本幹の一括切離は胆管および門脈を損傷する可能性があり不合格とします。右グリソンは前区域および後区域グリソン鞘を別々に処理してください。なお、左グリソン鞘の一括処理は小網付着部、アランチウス管の腹側での処理の場合のみ容認します。これより中枢側での切離は右肝管、後区域胆管などを巻き込む危険があるので不合格とします。vascular staplerの使用は容認します。ただし、本処理法で切除断端陽性になる恐れがある場合は個別処理を行ってください。

    8)肝離断:大量出血、エネルギーデバイスの不適切使用、肝静脈枝からの出血に対する不適切な対処などで不合格となることがあります。

    −膵頭十二指腸切除−

    1)全般的手術方針:resectabilityを確認してから十二指腸切離など次の手順に進むようにしてください。

    2)脈管の露出の際の危険と思われる操作(電気メスの使用方法や強引な剥離など)がないか?:出血時に鉗子をblindで深く入れすぎ粗暴と判定された事例があります。

    3)手術の主体性:前立ちによる吸引嘴管や鋏を使ったSMV前面の剥離が行われていて不合格になった事例があります。

    4)粗暴な手技:門脈からの出血時の操作が粗暴で、さらに出血させて不合格になった事例があります。

    5)血管の剥離層:エネルギーデバイスを過剰に使用したり、あいまいな層を電気メスやハーモニックで切離して不合格になった事例があります。

    6)吻合操作に安全性・確実性があるか?:膵再建の方法は問いませんが、膵空腸吻合で空腸側の粘膜まで縫合糸がかかっているか不明で不合格になった事例があります。

    7)SMA神経叢の処理:切除方針を決定し、まず記載してください。その上で方針通りにできているかを評価します。

    8)その他の注意点:

    門脈のトンネリングは上下で剥離し、可能な限り直視下で行うことを推奨します。

    総肝動脈、固有肝動脈の同定が不十分なままGDAを切離することは危険です。GDA切離前に、肝動脈血流がGDA遮断後も確保されていることを確認していることがわかるような動画、画像、手術記載等の提出を必須とし、それらが確認できない場合は不合格とします。

    確認の方法は問いませんが、術中のGDAクランプテストを強く推奨します。GDAクランプテストは肝血流の温存に留意し行ってください。

    膵断端迅速は、膵実質も提出してください。
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