一般社団法人 日本肝胆膵外科学会

学会について

理事長の挨拶

更新日時:2020年7月1日

一般社団法人日本肝胆膵外科学会
理事長 遠藤 格

 日本肝胆膵外科学会は、1988年に立案され、1989年に日本肝胆膵外科フォーラムとして発足し、1993年に日本肝胆膵外科学会となりました。その後、2011年に法人化され、2018年には30周年を迎え、高円宮妃殿下を始め国内外から多くの御来賓に御臨席頂き記念式典を開催させていただきました。現在、会員数は3,720名となり、日本そして世界の肝胆膵外科を先導しております。

 小生、2020年6月13日に開催された理事会において山本雅一先生の後任として第6代の代表理事(理事長)に選任頂きました。歴史と伝統ある本学会の理事長を仰せつかったことは大変光栄であると共に,その責任の重大さに身の引き締まる思いでおります.本学会は会員の皆様のご努力により大きく発展してきました。ここではご挨拶を兼ねまして、われわれ肝胆膵外科医が直面している問題と学会として社会に対して行ってまいりました取り組みについて紹介させていただきます。

 肝胆膵外科医の扱う疾患は胆石のような良性疾患から肝胆膵悪性腫瘍まで幅広いものです。2015年の肝癌・膵癌・胆嚢胆管癌の罹患者数の合計は99684人です(国立がん研究センター がん情報サービス)。2018年の癌種別死亡数では膵癌・肝癌・胆嚢胆管癌が4-5-6位を占めており、合計すると79552人となり、第一位の肺がん(74328人)をしのぐ数値となっています。肝癌は横ばいですが、膵癌・胆道癌は年々罹患数も死亡者数も増加しており、国民の健康を脅かす大きな問題となっております。

 このように予後が不良で危険性の高い術式が多い肝胆膵の高難度手術をより安全に、そして全国津々浦々で実施できるようにという『患者ファースト』の理念のもと、本学会は専門医制度を2004年に発足させました。5年間の修練とビデオによる実技審査を経て2011年に第一期生が誕生いたしました。その後も毎年順調に育成されており、本年(2020年)までに359名の肝胆膵外科高度技能専門医、529名の肝胆膵外科高度技能指導医が全国に配置されています。ちなみに、外科の基盤となる日本外科学会の会員数は約40000人ですから、高度技能専門医資格はその1%という極めてプレスティージの高い資格です。本制度を開始して以来、毎年高度技能専門医修練施設における手術死亡率を学会に報告することを義務付けております。その結果、手術死亡率は年々低下し、いまや国際的にも類をみない良好な術後成績になっております。今後もさらに安全な手術を求めて、学会をあげて改善を目指してまいります。

 2009年から、国内研究の活性化を目指し、高度技能専門医修練施設を中心としてプロジェクト研究を行なってまいりました。その成果は一流誌に発表されております。さらに台湾・韓国との共同研究も行っております。今後も、学会として新たなエビデンスを創出してまいります。

 本学会は、発足当初から『日本で創出されたエビデンスを世界に向けて発信する』ことを目指して参りました。1993年に英文機関誌(JHBPS)を創刊し、数多くの優れた研究成果を発信してきました。2019年のインパクトファクターは4.160点です。今後、これをさらに引き上げるべく、エビデンスの高いプロジェクト研究を立ち上げるとともに、コンセンサス・ガイドラインなどのキラーコンテンツの収載に力を入れて参ります。

 胆道癌診療ガイドラインの作成により市民・一般医家の皆様へお役に立てるよう最新のエビデンスに基づくガイドラインを作成してまいりました。最新版である改訂第3版は昨年(2019年)に上梓しております。あわせて、本学会では胆道癌登録事業を長らく行ってまいりました。今後もさらなるエビデンスの構築のため、正確かつ市民に役立つデータを集計・解析し、ガイドラインに反映してまいります。また近々転移性肝がん診療ガイドラインを発表する予定となっております。

 若手の育成は普遍的かつ重要なテーマです。海外で学ぶことで次世代のリーダーを育成することを目的として、International Observershipを1997年から行っております。2015年からは派遣するだけでなく、アジアの発展途上国からの留学生を受け付けております。

 我々肝胆膵外科医にも働き方改革の波が押し寄せ、勤務・自己研鑽の在り方も再考が必要になってきました。厳しい徒弟制度からの脱却が求められています。今後、ダイバーシティーを推進するとともにWork life balanceのとれた外科医の在り方を探索しなければ志望者の減少を招き、肝胆膵外科診療の退縮を招く恐れがあります。将来にわたって診療の質を落とさぬように継続してこの問題に取り組んで参ります。

 2012年から学会のグローバル化を目指した取り組みを行ってまいりました。毎年英語によるセッションを増やし、海外からの招待者による発表を増やしました。そして2017年の学術集会から完全英語化を達成しております。またグローバル化の一環として世界肝胆膵学会議(IHPBA)の支部としても活動しております。この組織のなかでも本邦からの優れた研究を発信しプレゼンスを高めていきたいと考えております。国際学会での発表を通して、日本の高度で緻密な手術・研究を世界に広めていきたいと思います。

 以上述べさせていただきましたように、これまで代々の理事長・役員・評議員・会員の先生方が積み上げられた本学会の実績ですが、今後も『患者ファースト』の理念を堅持し、安全かつ根治度の高い手術の開発を目指していきたいと考えております。さらに新たなエビデンスの創造に向けて精励恪勤して参る所存でございます。

 今後もご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。

2020年6月13日

PAGE TOP