一般社団法人 日本肝胆膵外科学会

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肝内胆管がんと肝良性腫瘍

更新日時:2017年7月6日

肝内胆管がんとは

肝良性腫瘍とは

 

肝内胆管がんとは

肝内胆管がんの概要

 肝内胆管がんは肝臓で作られた胆汁という消化液を肝臓から十二指腸まで運ぶ胆管のうち、肝臓内に位置する胆管(図1)に発生します。肝臓から発生する「原発性肝がん」の一つで、肝細胞がんに続いて2番目に多く、約4%を占めています(図2*)。頻度は低い腫瘍ですが、近年増加傾向にあります。

【図1】肝臓の解剖

【図2】我が国における肝臓がん(肝内胆管がん、肝細胞がん含む)罹患数の推移


出典:国立がん研究センターがん対策情報センター

 

病気の原因として、肝内結石症、原発性硬化性肝硬変との関係が報告されています。また肝炎ウィルス感染との関連も指摘されていますが、同じく肝臓に発生する肝細胞がんとは違い、基本的には正常な肝臓に発生します。ハイリスクグループの同定が困難であるため早期発見が難しく、腫瘍がある程度大きくなってから発見されることが多いのが特徴です。近年肝内胆管がんを含むゲノム(DNA)解析でFGFR2融合遺伝子、IDH1/2、EPHA2、BAP1などの遺伝子が肝内胆管がんの発生・進展に重要な役割を果たしていることが明らかとなり、今後新たな治療法の開発が期待されています。

臨床症状は、肝細胞がんと同様特徴的なものはありません。腫瘍マーカーは、CEA、CA 19-9が上昇することがあります。

 治療は、病変の切除が可能であれば手術が最も有効なため、肝切除が中心となります。手術が適していない場合には化学療法や放射線治療を行います。肝内胆管がんのうち肝切除を受けた場合の5年生存率は41.5%、肝切除が適応とならなかった場合には5年生存率は26.3%となっています。

 

肝内胆管がんの診断

 自覚症状はほとんどなく、進行するまで症状が出にくいことが特徴で、症状が出たときにはがんが進行している場合が多くなっています。定期健診などで肝機能の異常や肝内胆管の拡張が指摘された場合には、精密検査を受けることが勧められます。

検査は肝細胞がんと同様に超音波、CT、MRI、血管造影などの画像診断を中心に腫瘍の大きさ・形状や胆管内への進展の程度を調べます。必要に応じて直接胆管に造影剤を注入する方法(逆行性膵胆管造影検査:内視鏡を用いた胆管造影、PTC造影:超音波を用いて皮膚から胆管に細い管を留置し行う)や肝生検を行い、細胞や組織を採取してがん細胞の有無を確認します。腫瘍マーカーとしてはCEAやCA19-9を測定します。

【図3】肝内胆管がん:CT

【図4】肝内胆管がん:MRI

 

肝内胆管がんの進行度

 肝内胆管がんの局所進展度(T)(腫瘍の個数、大きさ、脈管侵襲(血管、胆管内へのがんの進展))とリンパ節転移(N)の程度から、4段階の進行度(ステージ)に分けます。手術で切除可能かどうかは、腫瘍を含めた肝切除後に十分な量の肝臓が残ること、遠隔転移(肝内、肺、骨など)がないこと、リンパ節転移が完全に治療可能であることなどを考慮して決定します。

 

肝内胆管がんの治療

肝内胆管がんに対する手術

 最も効果の高い治療です。胆管細胞がんは胆管に沿って進展するなど進展様式が多彩であるため、それらを考慮した肝切除範囲の検討が必要となり、場合によっては肝外胆管(肝臓から胆汁を運び出す胆管)の切除を要することもあります。また肝細胞がんと異なりリンパ節に転移しやすいことも特徴で、所属するリンパ節も手術で同時に取り除く(郭清)場合もあります。肝切除術後にはドレーンという管を使っておなかの中の状態(出血、胆汁の漏れの有無)を確認します。

手術でがんを取り除いた場合でも再発のリスクはあるため、術後長期の経過観察が必要となります。

【図5】肝内胆管がんに対する肝切除術

【図6】肝切除後の状態

 

手術と補助療法

 補助療法とは、外科手術に加えて術前・術中・術後に行われる化学療法・放射線療法などの治療法です。肝内胆管がんに対する補助療法として現時点で科学的に有効性が証明されているものはありません。しかしゲムシタビン(点滴治療)とS-1(内服治療)の組み合わせを用いた治療が肝切除術後の生存率を改善したとの報告(Murakami他:Ann Surg 2009; 250: pages 950-956)もあり、術前・術後化学療法とも現在研究が進んでいます。

 

肝内胆管がんに対する化学療法

 切除不能の肝内胆管がんに対する最適な治療法は化学療法です。化学療法としては以下のような薬剤を点滴または経口で投与します。全身状態が良好な患者さんに対する最も標準的な治療法は1です。

  1. ゲムシタビン+シスプラチン
  2. ゲムシタビン
  3. S-1
  4. ゲムシタビン+S-1

 

肝臓の良性腫瘍とは

肝臓の良性腫瘍

肝臓にはいくつかの種類の良性病変(腫瘍)が発生することが知られています。画像検査で診断がつき経過観察のみでよいものもありますが、がんとの見分けがつきにくく、場合によっては肝切除を中心とした治療が必要となることもあります。良性の上皮性腫瘍には肝細胞腺腫などがありますがまれな疾患です。また非上皮性腫瘍としては、血管腫、血管筋脂肪腫などがあります。

以下が代表的な肝良性病変(腫瘍)です。

 

肝血管腫

肝良性腫瘍のうち、最も頻度が高く(発生頻度4%)、女性に多く見られます。単発性のことが多く(図7)、通常は無症状です。検査は、腹部超音波(図8)のほか造影CT、MRIなどを行い、ほとんどの場合確定診断が可能です。治療は、血管腫と診断され増大傾向がない場合には必要なく、年一回程度の経過観察を行います。しかし肝細胞がんとの鑑別が難しいもの、腹痛など症状を有するもの、増大するもの(図9)、血液凝固異常(血液検査ですぐにわかります)を伴うもの(Kasabach-Merritt症候群)は手術(肝切除)の適応となります。また破裂することは極めてまれですが、その場合は肝動脈塞栓術(カテーテルを用いて肝血管腫に流入する血管を詰める治療)が有効です。

【図7】肝血管腫

【図8】肝血管腫:超音波検査

【図9】肝血管腫・増大傾向あり:造影CT

  

 

限局性結節性過形成(FNH

欧米では、女性に多いとされていますが、わが国では男女を問わず稀な腫瘤です。無症状で偶然発見されることが多く、肝硬変を伴わない肝臓に発生します。単発のものが多いものの、多発することもあります。経口避妊薬を内服している人に多く発生するとされています。肉眼的には病変の中心に線維性の瘢痕を認め、画像検査では造影CTや血管造影で特徴的な、最初に結節の中心部が点状に染まり、速やかに車軸状に拡散して全体が濃染する所見から診断します。確定診断がつけば治療する必要はなく、経過観察を行います。増大するもの、肝細胞がんと鑑別が難しいものは肝切除の適応となります。

【図10】限局性結節性過形成:造影CT

 

肝細胞腺腫

30~40歳の経口避妊薬を内服している女性に多く発症する肝細胞由来の腫瘍です。多発するもの、経口避妊薬や性別と関係ないものもあります。自覚症状は、自然破裂によりお腹の中に出血したり、腫瘍の中に内出血して腹痛などで見つかることがあります。検査では、造影CTなどで血管増生に富むのが特徴です。組織学的には良性ですが、初期の肝細胞がんとの見分けがつきにくいこともあります。治療は、経過観察でよいものもありますが悪性化するという報告もあるため、症状のあるもの、増大するものには肝切除が必要となります。

 

血管筋脂肪腫

腎臓に好発することで知られていますが、肝臓ではまれです。この腫瘍は、血管、平滑筋、脂肪の3成分から成る良性腫瘍です。検査は、造影CT やMRI、血管造影など行いますが、多彩な画像所見を示すため、診断が難しい場合もあります。経皮的針生検で確定診断されれば治療の必要はありません。しかし悪性化の報告もあるため、増大するものは切除が必要となることもあります。

 

炎症性偽腫瘍

炎症細胞の浸潤を伴う線維・血管組織の増殖を特徴とする病変です。繰り返す感染症(胆管炎など)が発生の原因とも考えられています。肝内胆管がん、転移性肝がん、肝細胞がんとの見分けが難しい場合もあるため肝切除を行うことで確定診断が得られる場合もあります。

 

腺腫様過形成

慢性肝炎や肝硬変の合併症として発生するいわゆる前癌状態で、将来がんへと進行する可能性がある腫瘍です。厳重に経過観察する必要があり、増大するもの、動脈血流が豊富になったものについては治療を検討します。

 

結節性再生性過形成

小さな結節(しこり)として肝内に発生することが多いものの、線維化は起こしません。確定診断されれば治療の必要はありません。

 

大再生結節

肝硬変となった肝臓内に発生します。肝細胞がんとの見分けが難しいことも多く、切除しなければわからない場合があります。

 

肝嚢胞について

肝嚢胞とは、肝臓に発生する嚢(袋)状の病変で腫瘍ではありません。内腔は上皮で覆われ、中には漿液成分(反応性の粘度が高くない液)を貯留しています(図11)。ほとんどは無症状で、増大傾向も強くないため経過観察を行いますが、増大傾向があり腹部圧迫による症状(腹部膨満や食思不振、黄疸など)のあるもの、嚢胞の壁が厚いもの、血流が見られる場合には手術を必要とする場合があります。その場合、原因となる嚢胞の局所治療(開窓術など:開腹手術または腹腔鏡下手術)が必要となりますが、嚢胞が肝臓全体に及ぶ場合には、肝移植が考慮される場合もあります。その他、エキノコッカスなどの寄生虫が原因で後天性に生ずる場合もあります。

【図11】肝嚢胞:CT

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