一般社団法人 日本肝胆膵外科学会

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肝移植について

更新日時:2017年7月7日

肝移植の概要

 肝臓は、人体の代謝(いろいろな物を作ったり、壊したりすること)の中枢で、主に「栄養の貯蔵庫」、「解毒・排泄」、「タンパク質の合成」の3つの機能を営んでおり、生命を維持するのに欠かせない臓器です。他の方法では治療困難となった患者の病的な肝臓を全て摘出し、健康な肝臓に入れ替える治療を肝移植と呼びます。1963年にアメリカで第一回目の肝移植が行われて以来、今までに世界で10万人を超える患者様に行われ、今や完全に定着した医療となっています。日本では生体肝臓移植が1989年に開始されてから20年余りが経過し、生体肝臓移植を受けた患者様は2015年末までに8000人以上、脳死肝臓移植を受けた患者様は320人以上になっています。(図1)

【図1】日本における肝移植数

 肝移植により新しい肝臓をもらう方をレシピエント、肝臓を提供する方をドナーといいますが、肝移植には大きく分けて脳死のドナーから肝臓を移植する脳死肝移植と、健康なドナーからその肝臓の一部を切除し移植する生体肝移植の二つがあります。日本では家族などが肝臓の一部を提供する生体肝移植が主流ですが、欧米では脳死肝移植が主流です。

肝臓移植を必要とする病気

肝臓移植適応疾患(成人)

  ・肝硬変症

    B型肝硬変、C型肝硬変、アルコール性肝硬変
   自己免疫性肝硬変、非B非C肝硬変

  ・胆汁うっ滞性疾患

    原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)
   バイラー病、カロリー病、胆道閉鎖症(BA)

  ・劇症肝炎

  ・代謝性疾患

     a-1 アンチトリプシン欠乏症
   ヘモクロマトーシス、ヘモジデローシス、ウイルソン病
   糖原病、高シトルリン血症、その他

  ・肝臓腫瘍

    肝癌(原発性)、良性腫瘍

  ・その他

    バッドキアリー症候群、先天性肝線維症

 

肝臓移植適応疾患(小児)

  ・胆汁鬱滞性疾患

     胆道閉鎖症、アラジール症候群、バイラー病
    総胆管拡張症、カロリー病、その他

  ・肝硬変症

     自己免疫性肝炎、その他

  ・代謝性疾患

     a-1 アンチトリプシン欠乏症、チロシン血症
    ウイルソン病、糖原病
    オルニチン・トランスカルバミラーゼ欠損症(OTCD)
    その他

  ・新生児肝炎

  ・劇症肝炎

  ・肝臓腫瘍

     肝芽腫、肝細胞癌、その他

  ・その他

 

 基本的に肝臓の障害が重く、生命の危機があり、新しい肝臓によって機能が回復すれば全身の状態が改善するすべての病態が、肝移植の対象と考えられます。成人ではC型肝硬変、小児では胆道閉鎖症が最多の移植適応疾患でしたが、今後特にウイルス性肝炎などは優れた経口抗ウイルス薬の登場によって減少するかもしれません。また、肝臓に由来する代謝性疾患で不可逆的な影響を及ぼすものや、多発性肝嚢胞のように大きな苦痛を伴う病態は、肝機能がある程度保たれていても対象と考えられます。劇症肝炎(急性肝不全昏睡型)は稀な疾患ですが、内科的治療による救命率は低く、迅速な肝移植の準備が必要と考えられています。

 

生体肝移植

 生体部分肝移植とは、健康な人から肝臓の一部分を取り出し、患者の悪くなった肝臓と取り替える手術のことです。生体部分肝移植の特徴的なところは、健康な人がドナーになる点です。わが国では、1989年に島根医大の永末直文教授が第一例目を行って以来、生体部分肝移植を中心に肝移植は発展してきました。これまで国内で行われた約8000例以上の生体部分肝移植が行われ、5年生存率は78%と報告されています(図3)。基本的にドナーは移植学会の倫理指針(成人で、親族6親等以内、姻族(配偶者の親族)3親等以内)を逸脱することは許容されないと理解されており、施設によってはさらに厳しい基準(三親等以内、血族ないしは配偶者迄、姻族は認めない等)を設けているところもあります。かつて禁忌とされていた血液型不適合肝移植は、最近の各種工夫によって成績は改善傾向です(図3)。

 脳死肝移植が数多く行われる欧米でも、近年のドナー不足から生体肝移植症例数が増えています。 脳死ドナー不足が改善されるまでの間しばらくは、生体肝移植がわが国の肝移植の中心とならざるを得ないと考えられます。

【図3】生体肝移植と脳死肝移植における累積生存率(上段)と生体肝移植におけるABO血液型適合度別の累積生存率(下段) 日本肝移植研究会・肝移植症例登録報告(2015年度)

脳死肝移植

 脳死のドナーから通常、肝臓全部を採取し、それをレシピエントに移植するものです。

 脳死臓器移植には、提供するドナーと、それを移植されるレシピエントの間を取り持つ斡旋者が必要ですが、日本では現在「日本臓器移植ネットワーク」という組織がこの任務を担っています。1997年にようやく臓器移植法が制定され、1999年にこの法律に基づく脳死肝移植が行われましたが、少しずつ増加しているとはいえ、脳死肝移植は、今までは年間10例程度にとどまっていました。2010年7月より臓器移植法が改正され、本人の意思が不明な場合も、ご遺族の承諾があれば臓器提供できるようになりました。また、15歳未満の方からも脳死下での臓器提供が可能となり、現在年間50例程度の脳死肝移植が行われています(図4)。脳死肝移植をする施設は現在24施設認められており、日本臓器移植ネットワークのホームページ(http://www.jotnw.or.jp/)で確認できます。

【図4】日本における死体臓器提供(肝臓)の推移

 

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