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膵臓がん

更新日時:2017年7月20日

膵臓がんとは

膵臓がんの概要

 膵臓がんは、膵臓の中の膵管上皮細胞から発生したがんです。診断と治療の非常に難しいがんで、診断がついた段階で手術できる患者さんはわずかに約20%に過ぎません。また切除できても術後の再発率が高く、術後の5年生存率は20-40%と不良です。

 日本人の膵臓がんによる死亡数は、肺がん、胃がん、大腸がんに次いで4番目に多く、2014年には約32000人が膵臓がんで死亡しました。膵臓がんは高齢者に多いため、高齢化社会の進行とともに非常に増加しています(図1)。

【図1】日本人のがん死亡数の推移

 膵臓がんを引き起こす特定の原因は明らかではありません。KRAS、CDKN2A/p16、TP53、SMAD4/DPC4などの遺伝子変異が膵臓がんの発生に強く関与していることが明らかになっています。慢性膵炎、糖尿病、膵管内乳頭粘液性腫瘍、膵嚢胞、膵臓がんの家族歴、喫煙、肥満などは、膵臓がん発生のリスクが高率です。

膵臓がんの診断

 膵臓がんの主な症状は、腹痛、背部痛、黄疸、食欲不振、体重減少などです。糖尿病が急に悪化した場合も膵臓がんの可能性があります。しかし、膵臓は内臓の中で最も奥の方で胃の裏側にあるため、がんになっても症状が出にくいのです(図2)。

【図2】膵臓と周囲の臓器

 膵臓がん患者さんの80~90%で、腫瘍マーカーのCA19-9が高値を示します。膵臓がんの診断では、CT・MRI・超音波・超音波内視鏡・内視鏡的逆行性膵管造影検査などの画像検査が有用です。中でも造影CT検査と超音波内視鏡は最も重要な検査法です。

膵臓がんの進行度(ステージ)とは

 膵臓がんの病期(ステージ)は4期に分類されます。1期と2期は切除可能、3期と4期は切除不能です。

  1期:膵内に限局し、リンパ節に転移していない。

  2期:腫瘍の一部が膵外に出る。リンパ節転移(-)は2A期、リンパ節転移(+)は2B期。

  3期:腹腔動脈または上腸間膜動脈にがんの浸潤を認める

  4期:肝臓、肺、腹膜、大動脈周囲リンパ節などへの遠隔転移を認める。

膵臓がんの治療

膵臓がんに対する治療法

 膵臓がんに対する治療法には、手術と化学療法(抗がん剤治療)の二つの方法があります。比較的早期であるステージ1・2期の膵臓がんには手術を行い、進行したステージ3・4期の膵臓がんには化学療法行います。手術と化学療法について述べます。

膵臓がんに対する手術

 膵頭部がんに対しては膵頭十二指腸切除、膵体尾部がんに対しては膵体尾部切除を行います。大きな膵臓がんに対しては膵全摘をおこなうこともあります。

  1. 膵頭十二指腸切除:膵頭十二指腸切除術とは、膵頭部、十二指腸(+胃の一部)、胆のう、および下部胆管をまとめて摘出する手術です。胃を全て温存する手術(幽門輪温存膵頭十二指腸切除)、胃の一部を切除する手術(亜全胃温存膵頭十二指腸切除)、胃の2/3を切除する手術があります。亜全胃温存膵頭十二指腸切除の手順をアニメーションで示します。


  2. 膵体尾部切除:膵体尾部切除術(=膵尾側切除術)とは、膵臓の体尾部を摘出する手術です。多くの場合、脾臓・膵周囲のリンパ節・脂肪・神経なども一緒に摘出します。膵体尾部切除の手順をアニメーションで示します。


  3. 膵全摘:膵全摘術は、膵臓を全て摘出する手術です。術後はインスリンが全く出なくなりますので、インシュリン注射が必要です。

手術と補助療法

 補助療法とは、外科手術にプラスして術前・術中・術後に行われる化学療法・放射線療法などの治療法です。膵がんに対する補助療法で科学的に有効性が証明されているのは術後の補助化学療法だけです。日本では術後にS-1という経口の抗がん剤を半年間服用するのが標準治療となっています。図4は膵臓がん切除後にS-1(赤線)とゲムシタビン(青線)を半年間用いた場合の全生存率(上段)と無再発生存率(下段)の結果ですが、S-1群の方が生存率・無再発生存率ともに良好でした。

【図4】膵臓がん切除後にS-1(赤線)とゲムシタビン(青線)を用いた場合の全生存率(上段)と無再発生存率(下段)。上坂他:Lancet 2016 pages 248-257

 また、術前に化学(放射線)療法を行う術前補助化学(放射線)療法は、まだ科学的な有効性は証明されていません。しかし、術前化学(放射線)療法は有効である可能性があるので、現在盛んに研究されています。

膵臓がんに対する化学療法

 ステージ3・4期の切除不能膵臓がんに対する治療法は、原則として化学療法です。また、ステージ3の遠隔転移のない切除不能局所進行膵臓がんに対しては、化学療法だけを行う場合と化学療法に加えて放射線治療を行うことがあります。化学療法としては以下のような薬剤を点滴または経口で投与します。全身状態が良好な患者さんに対する最も標準的治療法は1または2です。高齢者または全身状態にやや不安のある患者さんに対しては、3または4を行うことが一般的です。

  1. ゲムシタビン+ナブパクリタキセル
  2. FOLFIRINOX(オキサリプラチン+イリノテカン+フルオロウラシル+レボホリナート)
  3. ゲムシタビン
  4. S-1
  5. ゲムシタビン+エルロチニブ
  6. ゲムシタビン+S-1

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